2009年05月21日

『時砂の王』


"時砂の王 (ハヤカワ文庫JA)" (小川 一水)

第六大陸』(未読)などで注目されている小川一水の時間SF。

A.D.2536年、人類がETと呼ぶ、謎の増殖型戦闘機械群によって、地球は壊滅させられた。
それから62年後、人類は拠点を海王星に移して、反抗の最盛期を迎える。
しかし、ETは時間遡行を行い、過去の人類を攻撃するという戦略に変える。
それに対し、人類はメッセンジャーと呼ばれる人工知性体を主とする時間遡行軍を編成し、過去へと送り出す。

というのが大まかな設定。
主人公はメッセンジャーのオーヴィル。
メッセンジャーとは、人間身体を元にして、生殖と成長の能力を取り除き、代わりに耐久性と運動性を極限まで高め、外部情報網との連結機能を付与した人工知性体。
このオーヴィルを軸(というか他のメッセンジャーはほとんど活躍しない)に、時間遡行軍とETとの戦いを描いたのが、この作品である。

ぶっちゃけた感想を書くと、「『戦闘妖精・雪風』と『ターミネーター』シリーズを足して2で割って、100程引いたらこんな感じかな?」です。

書き下ろしなので枚数制限があったのかも知れませんが、最終防衛線である3世紀の邪馬台国に至るまでの過程を、もっと詳しく描いて欲しかったです。
オーヴィルのモチベーションの源であるサヤカとのエピソードに対する、彌与(卑弥呼)とのエピソードは物足りない。
邪馬台国に至るまでのETとの戦闘が二つの時代で描かれていますが、それも物足りない。
そして、ETとの決着の付け方も物足りない。
その他、ツッコミどころというか、説明不足なのか、考えてないのか、分からない点が多々ありました。
と、ないない尽くしで、実に食い足りない作品でした。

そんな感じで、★★☆☆☆

ところで、アレクサンドルはいつ目覚めさせてもらえるのでしょうかねぇ(笑)

P.S.
この作品も『失踪HOLIDAY』同様、私製電子書籍化してiPhoneで読んだのですが、本をバラしてしまっているので、古本屋に売れないというのはちょっと残念です(笑)

Amazonランキング:3077位
Amazonおすすめ度:

ラベル:小説 SF 小川一水
posted by smoky_air at 13:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年05月10日

書籍のデジタル化

放っておいても増えるのはお金…、ではなく本とCDとDVD(最近はBlu-ray)です。

保存スペースの確保には色々と苦労しています。
CDはこんなものを使って省スペース化してますが、本となるとそうはいきません。
そこで浮上したのが書籍をデジタル化するという方法です。

最近はGoogleやAmazonが書籍のデジタル化に積極的に動いています。音楽がCDというメディアから移行しつつあるように、書籍も紙というメディアから移行する時なのかもしれません。
(もっともGoogleのやり方や著作権に対する考え方には納得いきませんが)

以前より、教則本やゲームの攻略本はPDF化していたのですが、小説のデジタル化には手を出していませんでした。
というのも、教則本やゲームの攻略本は図表などがあるので、レイアウトを保つと言う意味でもPDF化はもってこいなのですが、小説、特に文庫本は違います。
(僕はハードカバーの本はほとんど買いません。文庫落ちするまでひたすら待ちます。買ってもせいぜいノベルズ版です)
ところが、文庫本をPDF化しても、ファイルサイズが大きくなってしまうし、外出先で読むには不便になってしまい、文庫本の長所がなくなってしまいます。。
最近はスマートフォンでPDFも閲覧できますが画面が小さいため、快適に閲覧するにはネットブック以上の画面サイズが必要でしょう。中にはいつでもどこにでもネットブックを持って行くのでPDFでいい、という強者がいるかもしれませんが(笑)
僕はネットブックも持っていないし、欲しいとも思わないのですが、持っていても駅前とかでの待ち合わせ中にネットブックを開いて読書なんて腕が疲れることはしたくありません。
しかし、テキスト化したデータならケータイの画面サイズでも読めます。最近はケータイ小説というジャンルもあるくらいです(もう下火かな?)。
しかし、ただ単純にテキスト化しても、通常の小説にある「ルビ」や「傍点」などの情報がなくなってしまいます。
一般に電子書籍と言われるものは、そういった情報も扱えるデータ形式になっています。しかし多くの電子書籍の形式は、誰でも簡単に扱えるものではありません。
誰でも簡単に扱える電子書籍のデータ形式。それが青空文庫形式です。
青空文庫形式とはその名の通り、「青空文庫」で用いられている形式です。
この青空文庫形式は広く使われており、ネットには個人でアップした小説が数多くありますが、大半はこの形式に沿ったものです。しかもiPhoneには青空文庫形式のデータを扱えるAppが数種類あります。これを使わない手はありません。

前置きが長くなりましたが、では、書籍をテキスト化するにはどの様なプロセスが必要なのでしょうか。以下が簡単なフローです。
 @書籍をスキャニング
 AOCRアプリで画像データからテキストデータを抽出
 Bテキストデータを校正、加工し青空文庫形式にする

そんな訳で、積ん読本の中から、シリーズ物でなく、薄く、作者に特に思い入れのない『失踪HOLIDAY』を選んで作業を開始しました。
が、Aで早くも挫折…
ただ読むのではなく、一字一句間違っていないかチェックしながら読むというのは、想像以上の労力が必要でした。 青空文庫の工作員すごいです。

そんな訳で、当初の目的を完遂することを諦め、なんとか楽にiPhoneで本を読めないかと、ネットを彷徨っていたら「MeTilTran」というアプリを発見しました!
Windows版なのですが、「画像ファイルの版組を解析して、指定した条件(画素数や文字の大きさなど)にしたがって版組しなおしてくれる」というスグレモノ!
いやあ、こんなアプリをタダで配布してくれるなんて、作者さんなんて太っ腹!

変なところで改行したり、句読点の禁則処理が出来ない、など不具合?はありますが、そんなものは脳内補間で補えます。
これで、読書ペースも上がるかもしれません(笑)
posted by smoky_air at 16:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『失踪HOLIDAY』


"失踪HOLIDAY (角川スニーカー文庫)" (乙一)

久々に小説を読みました(笑)
何故多くの積ん読本の中からこの作品を選んだのかは、次のエントリを読んで下さい。

収録作品は以下の二編。

『しあわせは子猫のかたち』
『失踪HOLIDAY』

まずは、『しあわせは子猫のかたち』
主人公の「僕」は幼い頃より人付き合いが苦手で、「自分を知る者のだれもいない見知らぬ土地へ行き、孤独に死ぬことを切望」している大学生。
その「僕」が伯父から紹介された一軒家で一人暮らしを始めるが、実はそこは前の住人が強盗に殺されたという曰く付きの物件。
その一軒家で始まる「僕」、前の住人が飼っていた子猫、そして前の住人で幽霊の雪村との奇妙な暮らしが始まるが…。

そして、表題作『失踪HOLIDAY』
主人公は14歳の女の子、菅原ナオ。6歳まで母と二人で貧乏暮らしをしていたが、母親の再婚相手が資産家で、ナオはいきなり「いいとこのお嬢様」となる。
しかし、その母も再婚から2年で死亡。その後、父親が再婚。その結果、父、母、娘のどれも血の繋がらない一家が出来上がり、ナオは自分がいつ菅原家を追い出されるかと不安に思いながら生活を送る。
ある日、父親の再婚相手キョウコとの喧嘩がキッカケでナオは家出をするが、その行く末は意外な方向に…。

というのが、両作品の大まかな設定。
体裁としてはミステリなのですが、そちらの方はおまけのようなものです(笑)
乙一の作品は今まで『GOTH』しか読んでなかったので、こんなハートウォーミングな作品を書くとは意外でした。
特に『しあわせは子猫のかたち』は久々に小説を読んで涙しました。
(小説読んで泣いたのは『アルジャーノンに花束を』『たったひとつの冴えたやりかた』『ハイペリオン(の「忘却の川の水は苦く」)』以来かな) ろくに中身を知らずに購入し、読んだのですが、結果としては良い作品と巡り合えました。
積ん読本を整理したら他の作品にも手を出し見ようと思います。

そんな感じで★★★★☆

posted by smoky_air at 16:26| Comment(0) | TrackBack(1) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年05月06日

『ももんち』


ももんち

冬目景の最新刊です(Amazonさんカバー画像がないじゃないですか「なにやってんのっ!」)
3月末に『幻影博覧会 3』『ACONY 1』が発売されているので、2ヶ月で3冊という、寡作な冬目景としては脅威的なハイペースの出版です(たまたま出版時期が重なっただけだと思いますが)。

主人公は美大系の予備校に通う岡本桃寧(おかもとももね)。家族、友人からは「もも」と呼ばれる、おっとりした性格の女の子。
このももの一年間が、冬目景らしい丁寧な描写(逆に言うと丁寧過ぎて話が進まない事がある。『イエスタデイをうたって』がその好例)で描かれています。

あとがきで、冬目景自身が「昔の少女漫画を目指した」と明記してます。
僕自身は「昔の少女漫画」というものがよくわからないのですが、嫁曰く「確かにこんな感じだったよ。ももちゃんかわいい」なので、作者の意図は達成できているのでしょう。
僕にとって、冬目景の作品は大抵モノトーンのイメージなんですが、この作品はちょっとパステルピンク入ってる感じです(もものキャラクターに因るものか、「昔の少女漫画」というコンセプトに因るものか)。

はっきり言って、冬目景という漫画家は「器用」ではありません。
しかし、その画のタッチと、紡ぎ出される叙情的な物語により、固定ファンは結構ついていると思われます(どの程度いるのかは知りませんが)。
読み手を選ぶ冬目景作品の中にあっては、入門用として良い一冊となっているのではないでしょうか。
(前述の『ACONY』も良いかもしれないです)

てな感じで★★★★☆

P.S.
ふと思い立って『黒鉄』を読み返したんですが、そのあとがきに「必ず再開します」という記述が…
(何故か打ち切りになったのだと思い込んでました)
LUNO』といい、描くものが溜まってますよ、冬目景さんっ!
ラベル:コミック 冬目景
posted by smoky_air at 17:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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